ねぇねぇ、辞書を見るとbesuchenもaufsuchenも両方「訪問する、訪れる」って書いてあるんだけど、違いはあるのかな?
言葉それぞれのニュアンスを知りたいなら、独独辞典を使ってみるといいかもしれないね。
独独辞典?
独独辞典とは、「ドイツ語の言葉をドイツ語で説明した辞書」です。
いわゆる広辞苑のようなものと言えます。独和辞典がドイツ語とそれに対応する日本語を一対一で示す一方で、独独辞典はその言葉の意味やニュアンスを文章で伝えます。
そのため、独和辞典を見てもイマイチ意味がわからなかったり、他の似た意味の単語とどう区別すれば良いか分からない時に重宝します。
本記事ではまず、いくつかの独独辞典を紹介し、その特徴をお伝えします。
次に、使い方や注意点について述べたいと思います。
まずは今すぐ使えるオンラインの独独辞典を二つ紹介します。
Dudenはドイツでもっとも権威のある辞書の名称です。
ドイツ人でさえ、「Dudenにそう書いてあるならそれが正しい」と言ってしまうほどパワーを持つものです。
本来は紙媒体で、正書法(綴りのこと)から発音、外来語やことわざなど、12のテーマごとにそれぞれ辞書が刊行されています。本記事ではそのオンライン版(無料)を紹介します。
言葉でクドクドと説明するよりも、実物をみていただいた方が効果的でしょう。
以下、オンラインDudenの”besuchen”のページを見ながらどのようなものかを見ていきましょう。
注:本記事では全てスマホ版の画像を使用しています。
冒頭にはその単語の品詞と、使用頻度が5段階で示されています。
使用頻度については、その単語が会話の中で出てきて不自然かどうかなどに関わりますから、参考になる情報といえます。
Bedeutung(意味)の項目を見てみると、このように、例とともにその語が持つ意味が丁寧に解説されています。
スマホ版だとどうしても文が詰め詰めです。
日本の広辞苑に該当するような辞書ですから、さすがに説明文が少々難解です。
中級者さん以降にオススメしている理由はここにあります。
下の方をたどっていくと、その語の類義語がたくさん示されています。
意味の説明がわかりにくい場合はまずここを見てみると推測しやすいかもしれません。
さらに下の方を見てみると、その語とよく一緒に使われる言葉が示されています。
「どの言葉と結びつきやすいか」を比較すれば、似た意味の言葉を区別する上で一つの参考になるでしょう。
まとめ
DWDS (Digitale Wörterbuch der deutschen Sprache)はDudenと同じくオンラインで利用できる独独辞典です。
こちらも実物を見ながら特徴を追っていきましょう。以下がbesuchenで検索して出てくるページです。
Dudenとは雰囲気が違いますが、こちらも少し窮屈ですが、Dudenよりは余裕があります。
品詞や発音、後の区切りなどの下に、意味や用例が記載されています。複数の意味がきちんと説明されており、情報量も十分です。
しかし、意味の説明はDudenと比較して簡潔に書かれています。
わかりやすくて助かりますが、逆に言えば説明を簡潔にした分、言葉の持つ細かい意味が抜け落ちているとも言えます。
意味の下を見てみると、Dudenと同じように類義語が豊富に示されています。
さらに下に行くと、Dudenと同じく、その語とセットで使われやすい語群が表示されています。
また、過去に新聞でその語がどのように使われていたかが例示されています。
この点ではDWDSの方がDudenより情報が豊富ですね。
最下部まで行くと、「その言葉が使われる頻度」が7段階のスケールと、時系列のグラフで示されています。
グラフの方はDudenにはないポイントですね。
まとめ
百聞は一見にしかずと言います。どうぞご自身でアクセスしてみて、試しに気になる単語でも検索してみてください。
次に、紙の辞書を紹介します。ここでは学習者向けに作られた辞書を紹介します。
もし紙媒体の独独辞典を手に入れたいという方がいたら、私は迷わずのランゲンシャイト(Langenscheidt)の辞書をオススメします。
ランゲンシャイトは言語関係に特化したドイツの出版社で、様々な言語の辞書等を出版しています。
ここから出版されている独独辞典には二つのバージョンがありますが、まず手に取っていただきたいのはLangenscheidt Power Wörterbuch Deutsch als Fremdspracheです。
この独独辞典は中級くらいのドイツ語学習者のために作られた辞書で、言葉の説明も理解しやすいように簡略化されています。
およそ5万語が収録されていますから、汎用性はそれなりに高いと言えるでしょう。
もう一つのバージョンが、Langenscheidt Großwörterbuch Deutsch als Fremdspracheです。
こちらも同様に、ドイツ語学習者に向けて作られた辞書ですが、上述のPower Wörterbuchと比べてより上級者向けに作られています。
収録語数もおよそ9万と、倍近くに増えています。
大は小を兼ねるとはいいますが、「ドイツ語をドイツ語で説明される」という感覚に慣れないうちは上述のPower Wörterbuchを利用するのが無難ではないかなと思います。
独独辞典は、主に「類義語の意味の違いを知りたい場合」や「和独辞典をみても意味がよく分からない場合」など、じっくりと調べたいときに力を発揮します。
独和辞典はドイツ語を別の言語である日本語で説明したものですから、必然的に説明しきれない部分や伝わりにくい部分が出てきます。
独独辞典を用いれば、その部分をきちんと知ることができるわけです。
リーディングの途中で意味をさっとチェックするというより、腰を据えてリサーチするといったイメージでしょうか。
これに対し、独独辞典を使わない方が最も典型的な場面は、「新出単語の多い文章の読解にチャレンジしているとき」です。
文章の内容を把握しなければならないという時に、分からない単語を一つずつ独独辞典で調べていては大変時間がかかります。
その結果作業が全く進まなくなってしまえば、それはモチベーションの低下にも繋がるでしょう。
独和辞典は独和辞典で、日本語母語話者である私たちに与えられた強力な武器です。
こちらにはこちらの強みがあります。
それぞれの使いどころを見極めて効果的に用いましょう。
具体的には、まず和独辞典を使い、それで不十分であれば独独辞典を用いるというのが良いでしょう。
時間や気持ちに余裕のあるときは和独を挟まずに直接独独を手にとってみても良いでしょう。
最後に、冒頭でネコさんが挙げていたbesuchenとaufsuchenの違いを、実際に独独辞典で調べて比較してみることにします。
以下にDuden, DWDS, Langenscheidt Power Wörterbuchから、それぞれ”aufsuchen”と”beuchen”の項目を引用します。
Duden
a) sich zu jemandem, an einen bestimmten Ort begeben
誰か、あるいは特定の場所に赴く
DWDS
a) jemanden, etwas kurz besuchen
誰かを短い時間訪れる
b) in einen bestimmten Raum gehen
特定の部屋に行く
Langenscheidt Power Wörterbuch
a) zu einem Zweck zu jemandem gehen
特定の目的で誰かの元へ行く
b) zu einem Zweck in einen Raum gehen
特定の理由である部屋に行く
Duden
a) jemanden, den man gerne sehen möchte, mit dem man freundschaftlich zusammen sein möchte, aufsuchen und sich für eine bestimmte Zeit dort aufhalten
ぜひ会いたい、友好的に共にいたいと思っている誰かを訪ね、特定の時間そこで滞在する
b) jemanden aus beruflichen Gründen [in seiner Wohnung] aufsuchen
誰かを職業上の理由から訪ねる
c) zu einem bestimmten Zweck aufsuchen
ある特定の目的で訪ねる
d) an etwas als Zuschauer/in, Zuhörer/in teilnehmen
何かに観客、聴衆として参加する
e) (an einer Schule, Universität oder sonstigen Bildungseinrichtung) eine Ausbildung absolvieren
(学校や大学、その他の教育機関で)養成・教育を修了する
DWDS
a) zu, jemandem, an einen Ort gehen und sich dort (länger) aufhalten
誰かのところ、ある場所へ行き、(比較的長く)そこで滞在する
1) zu jemandem, an einen Ort gehen, um mit jemandem zusammen zu sein
誰かと一緒にいるために、誰かのところ、ある場所へ行く
2) zu jemandem, an einen Ort gehen, um etwas Geschäftliches zu erledigen
何か業務的なことをするために、誰かのところ、ある場所へ行く
3) zu jemandem, an einen Ort gehen, um etwas zu betrachten, zu hören, zu lernen
何かを観る、聴く、あるいは学ぶために誰かのところ、ある場所へ行く
4) zu jemandem, an einen Ort gehen, um an etwas teilzunehmen
何かに参加するために、誰かのところ、ある場所へ行く
Langenscheidt Power Wörterbuch
a) zu einer Person gehen oder fahren, um für einen kurzen Zeitraum bei ihr zu sein
ある人物のところへ行き、短期間(短時間)その人の元で過ごす
b) bei einer Veranstaltung o. Ä. anwesend sein
あるイベントなどの場にいる
c) für kurze Zeit an einen Ort oder in ein Land reisen, um interessante Dinge zu sehen und zu erleben
面白いものを見たり経験したりするために、短い時間ある場所や国へ旅行に行く
d) regelmäßig am Unterricht einer Schule oder Universität teilnehmen
定期的に学校や大学の授業に参加する
このように比較してみると、aufsuchenが「〜のところへ行く」という基本的な意味が強い「軽い」言葉であるのに対し、besuchenはそこに「目的」や場合によっては「ある程度まとまった時間」などの意味が付与された「重い」言葉であることがわかります。
これはそれぞれの単語の説明文の量の差などからも読み取れますね。
ドイツ語母語話者はこうした言葉の違いを直感的に理解しています。
それは私たち学習者とは比べ物にならないくらいたくさんのドイツ語を見聞きしてきたことに由来します。
私たちがこうした感覚を身につけるためには、独独辞典をはじめとした様々な手段を用いて調べ、知識として取り込む必要があります。
本記事では独独辞典をテーマにここまでお話ししてきました。
中級者さん向けということで独独辞典の紹介をしましたが、「ドイツ語を使ってドイツ語を理解する」という感覚は独和辞典を使って調べた時にはない達成感があります。
初級者の方にもぜひ、少しずつ触れていただいて、ドイツ語を道具として使って自分の世界を広げる感覚を味わってもらいたいなと思います。
記事のまとめ
ドイツ語オンラインレッスンの受講生募集中 🇩🇪 ♪
自然なドイツ語を身につけるためには、練習が欠かせません。
先生と一緒に会話練習を繰り返し、学んだ表現を自分のものにしていきましょう♩
Vollmondは日本人講師が多いので、初心者の方でも安心して受講できます。
この記事を書いた人: Konischi
大阪の大学院生(修士)。ドイツの国語科の教科書について研究中。
Twitter (@y_konischi)で役に立ちそうなドイツ語情報を投稿したりしていなかったりします。お力になれることがあればぜひお声がけください。