この記事では幼稚園から中学2年生までドイツの現地校で過ごしたVollmondドイツ語講師のmikiがドイツの学校制度(Schulsystem)について紹介します!
できるだけドイツ全土で共通する一般的な教育制度をまとめていますが、州や学校、個人単位でも変わることがあるためあくまで一例として呼んでいただけると嬉しいです。
7歳からギムナジウム卒業まで現地校に通った私もコメントを書いているのでぜひ参考にしてください♩
目次
まずはみなさんも知っている日本の学校制度を確認しましょう。
日本の義務教育は中学校3年生までとされており、高校への進学率は98.8%と世界的にみてもかなり高い水準になっています。
日本の学校制度
ではドイツの学校制度全般についても解説します。
実はドイツと日本の学校制度にはかなり違いがあるので、小学校から解説します。
日本では小学校1年生、中学校1年生、高校1年生と学校の階級別に呼びますが、ドイツでは「小学校」「中学校」などと学校の階級を呼ぶことなく、中学1年生のことを「7年生」、高校1年生のことを「10年生」と1から順番に数えることが一般的です。
ドイツ語で小学校はGrundschuleと言います。地域によって学校システムが違うこともありますが、ドイツのほとんどの小学校は4年生までです。
なのでドイツ人とGrundschuleの話をするときは、ドイツ人にとっての小学校生活は10歳まで!
つまり小学校4年生までと言う認識で会話していることを覚えておきましょう。
もし日本の小学校の話をしたいときは、次のように解説してあげましょう◎
Japanische Grundschulen sind bis zur sechsten Klasse.
日本の小学校は6年生まであるんだよ!
※ドイツ語では Klasse は「クラス」だけでなく「学年」や「等級」という意味も込められています。
▼現地の小学校に突然通うこととなったKanade先生の体験談もぜひ参考にしてください。
▼Vollmondのポッドキャスト「Japanischドイツ語カフェ」では日本とドイツで過ごした小学校時代の思い出話をたくさん話しているので、他にも色々な違いが気になる人はぜひ!
こんな話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
確かに、ドイツの小学校と日本の小学校の最も大きな違いは進路だと思います。
ドイツでは小学校4年生以降通う学校の種類によって、将来の進路が大きく変わります。
小学校4年生時点でそれまでの性格を見極められ、成績順に進路を先生に推薦されます。
ギムナジウムにいくための成績は州によって異なりますが、一般的には「Deutsch(ドイツ語、国語)」「Mathe(算数)」の平均が2,0〜2,5以上でなくてはならないと言われており、他にも家庭の事情や子どもの希望によって進路を先生とともに決めていきます。
ちなみに、ドイツでは1が最もいい成績で6が最も悪い成績となりますので注意してくださいね。
バイエルン州は「HSU(Heimat- und Sachunterricht)=日本の生活科や総合的な学習の時間に近い科目」も入れて3科目の平均2,33以上必要、NRW(ノルトライン・ヴェストファーレン)州は成績は大きく関係しないなど、州によってかなり違いますのでご自身の地域に合わせた情報収集をおすすめします。
私の場合は小学校4年生になった時点で母と先生が1対1の面接を行い、進路を決めていました。
当時の私は成績はいいものの、ドイツで最も重視されている「発言すること」が苦手だったため、Realschuleをおすすめされていました。
ただし、その場合だと日本の高校資格に相応しないため日本に帰国しづらくなったり、また将来大学に行かせたいという希望を考慮し、Gymnasiumへの入学を推薦してくれました。
ただし、RealschuleやMittelschuleに進学したからといって必ずしもGymnasiumに進学したり日本への帰国や大学進学が不可能なわけではありません。
次はその進路先についても解説します。
ドイツのMittelschule(Hauptschuleと言うことも)は日本でいう小学校5年から中学校3年生までに卒業する基幹学校を示します。
日本とは違い必ず大学に行けるわけではなく、基幹学校に通っている生徒のほとんどが卒業後に職業学校に通ったり、昔はMeister(マイスター)などの専門職についていました!
成績が優秀な子は専門大学などに通う資格が取れるRealschule(実科学校)や、努力次第ではGymnasiumに入ることもできます◎
また、実は第二外国語を学ばないことも一つの特徴です!
英語は第一の外国語としてどの学校でも必須ですが、一般的にドイツのGymnasiumやRealschuleでは5年生または6年生あたりからフランス語、ラテン語などを学ぶことができます。
他にはスペイン語、イタリア語、ギリシャ語、ロシア語(特に旧東ドイツ地域)がある学校もあります。私が通っていた学校には日本語もありました!
Hauptschulabschluss(基幹学校卒業)と日本でいう中卒(Mittelschulabschluss)は同じ立ち位置ではありますが、学校システムが違うことから、日本とドイツの学校の名称は分けて使うといいでしょう!
Ich habe meinen Mittelschulabschluss vor 10 Jahren fertig gemacht.
10年前に日本の中学校を卒業したよ。
▼Vollmondのポッドキャスト「Japanischドイツ語カフェ」では日本とドイツで過ごした中学校時代の思い出話をたくさん話しているので、他にも色々な違いが気になる人はぜひ!
Realschuleは日本語に訳すと「実科学校」です。
日本でいう高校1年生で卒業資格を取り、その後はAusbildungを行ったり、Fachabitur(一般的なAbitur(総合大学入学資格)よりも進学先が限定されている資格)を取って大学に進学することも可能です。
また成績がいい希望者は、基幹学校生がRealschuleに行けるのと同様に、一定以上の成績を取得している希望者はRealschuleからGymnasiumにいける制度もあるんですよ◎
では最後にGymnasiumについて説明します。
Gymnasiumは日本の中高一貫生教育にあたり、高校卒業と同じ立ち位置にありますが、卒業に関する大きな違いはGymnasiumでAbitur(アビトゥーア)という大学進学のための資格(≒高校卒業試験)を取得することです。
日本では高校生のうちに大学受験をする学生がほとんどですが、Abiturを取得すると大学受験をする必要がなくなることが日本とドイツの高校卒業資格の本質的な違いになります。
ただもちろん、どんな大学にでも入れるわけではありません!
Gymnasium に通っていた11, 12, 13年生(Oberstufe)の成績に加えて、Abitur(卒業試験)の点数によって成績がつけられ、その成績の範囲内で大学を選ぶことができます。
Oberstufe(上級学年)では大学のように専門分野を選択します(州によってはDeutsch, Matheは必須の場合もあります)。LK(Leistungskurs)と言われるレベルが高めの専門分野の科目と、GK(Grundkurs)という普通レベルの科目を選び、最後その科目でAbiturに挑むというイメージです。
例えば私は「Mathe(数学)」「Physik(物理)」「Chemie(化学)」をLKとして選択し、「Latein(ラテン語)」「Erdkunde(地理)」をGKとして選択し、Abiturの試験科目は計5つでした。州によって異なります。
例えば、ドイツでは最も難易度が高いとされているのが医学部と法学部です。
これらの学部に入学したい場合は、Abiturをほぼ満点近く取らないと入れないと言われています。
ただし、州によってAbiturの点数の付け方、平均点、成績の付け方に差がありますし、大学によって求められている点数も違うので、多くの大学希望者は自分が暮らしている州だけでなく、別の州の大学を受験したりします。
国を跨いでオーストリアの大学に進学する人もいます。
日本では難易度の高い大学に入るために浪人をし再受験後大学に入る学生もいますが、ドイツでは成績が悪くて大学に入れないから留年しもう一度Abiturを受ける人は少ない印象です。Abiturに受からなかった、もしくはOberstufeで成績が届かなかったという理由で留年するケースは珍しくありません。
Abiturを取得してさえいればWarteliste(ウェイティングリスト)に大学側が入れてくれるので、基本的には成績があまり良くなくても待てば入れることが多いです。
上述したように、Gymnasiumを卒業することは日本の高校卒業に値するものでありますが、日本とドイツでは高校卒業資格の種類が違うので「日本の高校を卒業した= Gymnasium に行った」と言うのには違和感があります。
「日本の高校を卒業した」と言いたい場合は、次のように言いましょう!
Ich habe meinen Oberschulabschluss gemacht.
日本の高校を卒業したよ。
▼ドイツの高校生活についてもっと知りたい方は、ギムナジウム留学に行ったVollmondのヨシタカ先生の体験談もぜひ参考にしてください。
▼Vollmondのポッドキャスト「Japanischドイツ語カフェ」では日本とドイツで過ごした高校時代の思い出話をたくさん話しているので、他にも色々な違いが気になる人はぜひ!
これまで紹介した学校に加え、Gesamtschule(総合学校)もドイツにはあります。
5年生から13年生(高校4年生)までの一貫性のある学校のことを指します。
大学に行かず就職する子はRealschuleの卒業資格が取れたり、大学に進学する子はそのままAbiturを取れるので、子どもの進路が定まっていない場合は小学校から総合学校にいくことが多いです。
またそれらとは別にFörderschuleという学習障害、身体障害、学習困難のある子が入学できる特別支援学校もあります。
FörderschuleはSonderschuleと言われることもあります。
ドイツ人と学校の話になった時の参考にしてみてくださいね!
最後に、これまで紹介してきた学校を卒業した後の進路として用意されている重要な教育制度について解説します。
では続いて、Ausbildungについても説明したいと思います。
ドイツに転職したい、移住したいと考えたことがある方なら耳にしたことがあるのではないでしょうか。
Ausbildungは日本にはないドイツ独特の制度になりますが、訳すと職業訓練という意味になります。
大学とは違い、実際の仕事の実践に特化して行われる教育です。
まず前提として、ドイツには新卒採用という制度がありません。
そのため、社会人になるため一定の訓練を受ける必要があります。
大学生の場合は、Praktikum(インターンシップ)を通じて社会経験を積み、就職活動する人も多いです。
Ausbildungも同じく、学生が社会人になるための登竜門であり、特にHauptschuleやRealschuleを卒業した多くのドイツ人は何かしらの職業において Ausbildungをします。
実は、ドイツのスーパーのレジの方もAusbildungをしているのです!
Ausbildungはほとんどの職業にあり、基本3年間行われます。
日本では企業を軸に就活を行う学生が多いイメージですが、ドイツではなりたい職業を見つけ、Ausbildungを行っている企業に応募をします。
ここで採用されたら訓練を始めるという流れになります。
Ausbildungは特定の職種に対して資格を取れたり一人前になれることが一番の目的です!
職人が多いドイツらしい制度とも言えます。
それに対し、Praktikumは日本のインターンシップと同じように、その職業を「知ってみる」という認識が強いです。期限も大体6ヶ月とAusbildungと比べて短いです。
また、Ausbildungはお給料が貰えますがPraktikumは無給であることの方が多い、Praktikumは基本的に学校に在学しながら行うことが多い(在学していることが応募資格であるケースが多い)、という違いもあります。
私は実際に9年生の時と、Master(修士課程)でPraktikumを行いました!Bachelor(学士)では必須なことが多いです。
医者や弁護士などの職種に関してはAbiturを取り大学の卒業資格がないと受けられない研修も一部あります。
職種の幅が広がったり給料も良くなったりするからと、Ausbildungをしてから大学に入ったり、大学の卒業資格を持っている人がAusbildungをしたりすることも少なくありません。
実際に私の友人はAbiturを取得したけれど、もう勉強をしたくないとドイツの大手のドラックストアにてAusbildungをしていました。
マネジメントを学びたく、店長の職業訓練を3年間したけれどあまりにも過酷で、今は大学で情報学部に入りエンジニアを目指しています。
ドイツではAusbildungが気に入らず、中断する方もしばしばいますが、日本と違い未経験採用などがありませんので職業転換はとても難しいのです。
そのため、自分探しの旅と言って世界を飛び回りやりたいことを探そうとする人もいます。
ドイツと日本は学校制度だけでなく、就職制度も違うので興味深いですよね!
Vollmondではドイツで実際にAusbildungを行った日本人の体験記を公開中!興味のある方はぜひ覗いてみてください。
▶︎Ausbildung記事一覧はこちら
そして最後にドイツ人もよく頭を抱えるFachhochschule(専門大学)とUniversität(総合大学)の違いについて解説します。
上記で説明した通り、UniversitätもFachhochschuleも「大学」という認識にあたりますので実際に何が違うのかわかりませんよね。
大まかに説明すると、日本の大学と専門学校の違いと少し似ているかもしれません。
総合大学では研究や総合的な知識を取得することができ、Theorie(理論)が重視されることが多いとされております。
医者や弁護士など幅広い知識が必要とされる職種や研究職につきたい方は大学に通うことが一般的にはおすすめされています。
一方で Fachhochschule ではより Praxis(実習)が重視されており、建築士やエンジニアが多いとされています。
ただもちろんそれらの学科は大学でも学ぶことができます。
ドイツでは総合大学と専門大学以外にも種類はあるの?
日本のように音楽大学があったり、美術大学や映画大学も存在するよ!
ただ、とっても人気で入学希望者も多いから、入学できるまで数年待機したり、入学試験を何度か受け直す生徒もいるみたい。
Fachhochschuleで学べる学科のほとんどは大学でも学ぶことができますが、決められたカリキュラムに大きな違いが出るので、実習がしたいのか、それとも理論を学びたいのかなど、自分の好みで選ぶ方も少なくありません。
他にも講義内容に違いが出ることも多く、Fachhochschuleは一般的な学校と同じく一つのクラスや講義の人数は30〜40人程度ですが、Universitätの規模によって800人などを超える講義もあったり大きな違いが出ます。
それがいいという方がいれば、少人数がいいという方もいます。
Fachhochschuleと比較して、総合大学ではより自由に気になる単位を取ることもできますし、メリットとデメリットはそれぞれあります。
ただし、まとめ図にも記した通り、ドイツでは大学に入学できるのはAbitur取得者のみなので、FachhochschuleにもRealschuleの成績が入学時に合否を分けます。
ただし最近はAbiturを取得していなくても応募できる大学も稀ではあるものの存在します!
▼大学に関するドイツ語をもっと知りたい方はこちらの記事もチェック!
ちなみに、Bachelor(学士)は日本では4年間通うことが当たり前ですが、ドイツでは3年間です。Master(修士)は日本と同じく2年間です。
以上、ドイツの学校システムを解説しましたがいかがだったでしょうか?
かなり複雑ではありますが、小学校4年生から大きく人生が左右されるドイツの学校制度があるからこそ、幼いながらも自立しているドイツ人はかなり多いと思います。
メリットもデメリットもたくさんありますので、よくニュースや友人間でも学校制度の話題が出たりします。
ただドイツと日本では学校教育のシステムが大きく違い、話にちょっとしたズレが生じることもあります。
ぜひドイツ人と話す場合は、日本の学校制度について簡単に説明してみてくださいね!
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この記事を書いた人:miki(Vollmondドイツ語講師)
東京生まれ、ドイツのミュンスター育ち。幼稚園からGymnasium8年生まで(中学2年生)までドイツ人に紛れながら現地校にてすくすくと育ちました。大学ではドイツ文学文化専攻で自分の生まれ育ったドイツのさらなる魅力を学び、主にドイツ労働の研究に励んでいました。現在は広報やメディアのお仕事をしながら、来年ドイツ移住に向けてC2の試験勉強。