こんにちは!Vollmondで講師をしているYuと申します!
現在は一時帰国中ですが、日本の大学院に在籍しながらドイツのミュンスターという街で文学の研究をしています。
この記事では、僕がドイツ語を学び始めたきっかけや、文学研究者を志すに至った経緯などを書いていこうと思います。
ドイツ文学を博士課程に入ってまで学ぶ方は多くはないと思いますが、その他の分野の研究にドイツ語を使用する方などの参考にもなれば幸いです。
目次
Yu先生のプロフィールは詳しくはこちらのページで確認してね!
年 | 出来事 |
---|---|
2014. 4 – 2015. 3 | オーストリア・ウィーン大学へ交換留学 |
2019. 11 | ゲーテC2取得 |
2019. 5 – | ドイツ・ミュンスターにて研究滞在 |
2020 – | Vollmondドイツ語講師 |
大学からドイツ語を学び始めた僕ですが、そもそもなぜこの言語を学び始めたのかをよく友人から訊かれます。
入学当初、僕が学部時代に通っていた大学が提携していた交換留学先が多くなく、その中で唯一魅力的だったのがオーストリアのウィーン大学だったから…という単純な理由でした。
世界史が好きだった僕は、ヨーロッパへの関心も強かったです。
さらに、ウィーン大学から毎年送られてくる留学生との交流も僕を刺激し、「さらにドイツ語を上達させてコミュニケーションに磨きをかけたい!」という意欲も湧きました。
僕が大学一年生のころ、英語の先生のある一言が、僕の心に刺さりました。
とはいえ、僕が直接聞いたわけではなく、友人から聞いたのですが。
その先生は、僕がドイツ文学を専攻しようとしていることについて、こう言ったそうです。
「トーマス・マンなんて、英語で読めるでしょ?」
たしかに、作品を楽しむのにわざわざ原文で読む必要はないし、マンの作品なんて日本語訳も豊富にあって英語すら必要ない。
ですが、本当にこの考え方は正しいのでしょうか?
作品の内容を理解するというためだけなら、ドイツ語で何時間もかけて(場合によっては、何十時間も)一つの本を読了する必要はないのかもしれません。
ですが、本当の意味で作者が伝えようとしていることを汲み取るためには、かなり状況が変わってきます。
原文と向き合い、文章のニュアンスや、その文章に含まれる単語が持つ意味合いについて考えていかなければなりません。
文学を学ぶということは、ただ読むこととは違うものなのです。
いずれにせよ、この先生の発言を耳にしたことが、ドイツ語を学ぶ意義について考え始めるきっかけになりました。
僕が学部生時代に通っていた大学では、第二学年から専門に分かれました。
ドイツ文学を専攻として学び始めた頃は、正直なところ文学を読むということよりも、ただドイツ語の習得に意識があったように思います。
当時の僕にとって、文学は単にドイツ語を上達させるためのマテリアルであって、文学そのものに強い関心があったわけではありませんでした。
ウィーン大学にて一年間学ぶ機会を得た僕は、早速現地のドイツ文学科の授業に参加することに。
予想通り、先生が何を言ってるのかわからずじまい。
それでも、レコーダーを購入して教壇の上に置かせてもらい、何度も繰り返し聞いてなんとか内容を把握してました。
ウィーン大学にて他の学生とともに文学を学ぶ機会を得られたことは、僕に文学への新しい視点を与えてくれたように思います。
ゼミや授業に参加して、現地の学生らの文学に関するディスカッションに参加するたびに、僕の文学に対する考え方がガラッと変わっていったのです。
文学からドイツ語を学ぶことはとても素晴らしいことです。
ですが、それだけではもったいない。
文学を通して、作家と歴史・思想の関わりを理解し、何か自分の人生にとって大切だと思えるものを学びとることができれば、文学が持つ価値は何倍にもなると僕は考えます。
そしてさらに、作家が用いた言語をそのまま理解できれば、文学を学ぶ楽しみも増していくはずです。
こうした考えに僕を導いてくれたのは、大変ながらも充実した留学生活でした。
ウィーン大学のドイツ文学科での経験を通して文学への関心も一層強まり、当時学部生だった僕は、帰国後は修士課程に進もうと決めました。
交換留学中、ウィーン大学の博士課程に在籍していた先輩に、彼の博士論文に関する口頭試問会に誘ってもらったこともまた、自分の進路に大きな影響を与えてくれたと思います。
試問会で行われた議論の内容は当時の自分にとって(今も理解できるか不安だけど)難しく、全く把握できませんでしたが、いつか自分もその先輩のように、自らの研究についてディスカッションを行いたいと考えるようになりました。
帰国後、指導教官からの勧めもあり、他大学の大学院に進学し、修士課程だけではなく博士課程への進学を志すに至りました。
卒業論文を書き上げたあと、他の大学の修士課程に進学し、新しい環境で文学研究に専念することになりました。
その後博士課程にまで進み、文学研究に専念することになりました。現在では、13世紀から17世紀の文学作品を中心に研究を進めています。
この時代の作品、特に16世紀後半から17世紀のもの(バロック文学)は、日本ではほとんど研究が進んでおらず、翻訳などもかなり少ない状態です。
当時の作品を読み進めるためには、大学で学ぶ文法だけでは全く足らず、その難解さはとびきり。
それでも、あえてこの分野に携わるのは、自分にとって興味深い作品があるのはもちろん、他の日本の研究者たちが触れてこなかったテーマを開拓していくことができるためです。
僕にとってのドイツ語学習とは、作品を理解するためのツールを強化するだけでなく、遥か昔の時代・地域の人々の文化にアクセスするための手段を増やすものなのです。
そして、僕に研究を進めることの意義や楽しさを教えてくれるもの。
僕の研究を通して、いつかこの中世やバロックの文学作品に関心を抱く人たちが増えてくれたら嬉しいと思います。
僕が昔住んでいた学生寮で、第二言語を学ぶ意義について書かれたポスターを見つけました。
そこには、「言語を学ぶことで、新しい視野を獲得できる。」といった文章が。
確かにその通りなのです。
僕の全く知らなかった世界が、ドイツ語のレベルが高まるにつれ、開けてきたように思います。
今でも研究を続けることができているのは、文学に対する関心はもちろん、「ドイツ語が好きだ!」という気持ちがあるからだと思います。ドイツ語は僕にとって、研究を進めるツールである以前に、僕を育ててくれる良きパートナーであると言えるでしょう。
研究のみならず、あらゆる仕事や学びの中で、ドイツ語への関心や愛情を持ち続けていくことが、物事を継続させる鍵なのかもしれませんね。
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