ドイツ語の語順を徹底解説!初心者が覚えるべき4つのルールと例文

今回は、意外と疑問に思っている人が多いドイツ語の語順について解説していきます。

1つ目には「枠構造」について、2つ目、3つ目にはよく質問をもらう「主語」「人称代名詞」の位置について、4つ目には応用編として、「tekamoloの法則」という文法ルールについて解説していきます。

「枠構造」とは?

枠構造(Satzklammer)は、「2番目の動詞と繋がりの深い単語は最後に置かれる」(=枠で囲まれているように見える)というドイツ語ならではの文法ルールです。
語順だけではなく、分離動詞や完了形、助動詞など他の文法事項もこのルールを知っていると理解しやすいです。

実際の例文を見ながら確認していきましょう!

例文一覧

Ich lerne heute Deutsch.
私は今日ドイツ語を勉強します。

「ドイツ語を学ぶ」は、不定詞句で Deutsch lernen と表します。
2番目に来る動詞 lernen(学ぶ)の目的語として関係が深い単語は、Deutsch(ドイツ語)ですので、この語順が自然な流れです。

△ Ich lerne Deutsch heute.
こちらでも伝わりますが、自然な語順ではありません。

Er spielt gut Klavier.
彼は上手にピアノを弾きます。

「ピアノを弾く」は、不定詞句で Klavier spielen と表します。
動詞 spielen(弾く)に対する目的語は Klavier(ピアノ)となるため、この語順が自然な流れです。

△ Er spielt Klavier gut.
こちらも少し不自然な語順となります。

Ich gehe um 11 Uhr ins Kino.
私は11時に映画館へ行きます。

こちらも、動詞 gehen(行く)に1番繋がりが深いのは ins Kino(映画館へ)ですので、最後に置かれます。

Ich bin jetzt wieder motiviert.
またモチベーションが湧いてきたよ。

「モチベーションが湧く」は、motiviert seinを使って表します。
こちらは状態受動と呼ばれる文法で構成されており、sein+過去分詞のルールで作る事が出来ます。

状態動詞seinと関係が深いのは、motiviert ですので、1番最後に置くのか自然です。

色々な文法で見かける枠構造

「枠構造」と聞くと難しそうなイメージですが、実は知らず知らずのうちに皆さんが普段使っている文法ルールにも登場しています。
この記事ではその中から分離動詞、現在完了形、話法の助動詞を取り上げます。

分離動詞 Trennbare Verben

基礎動詞と分離する前綴り(Präfix)があり、前綴りを文章の最後に置くってやつだよね!

そうそう!じゃあ例文を見てみよう!

Ich stehe um 7 Uhr auf.
私は7時に起きます。

※ auf|stehen 起きる

前綴りaufが1番後ろに置かれることで、主語の後ろに置かれる基礎動詞と結び付きを示しています。

◆分離動詞についてもっと詳しく知りたい方はこちら↓

現在完了形 Perfekt

次に、現在完了形(Perfekt)の例文を使って解説していくよ。

2番目に補助動詞(Hilfsverben)のseinまたはhabenを入れ、1番最後に過去分詞(PartizipⅡ)を入れて作るんだよね!

そうそう!完璧だね。例文を見てみよう!

Ich habe gestern den Film gesehen.
私は昨日その映画を観ました。

2番目に置かれた補助動詞の内容を、1番後ろの過去分詞示しています。

◆現在完了形を復習したい方はこちら↓

話法の助動詞 Modalverben

助動詞を使う時は動詞の原形を後ろに置くっていうルールがあったよね!

Genau! 例文を見ていこう!

Ich kann gut schwimmen.
私は上手に泳ぐ事が出来ます。

助動詞の内容を表す動詞の原形が1番後ろに置かれることで、2番目に置かれる助動詞との繋がりを示しています。

◆話法の助動詞についてもっと詳しく知りたい方はこちら↓

以上、これらの文法上のルールには、2番目の動詞と繋がりの深い単語は最後に置かれるという枠構造の考え方がベースにあると言えます

「主語」の位置

「主語は最初にくる」と思っている学習者が多いですが、ドイツ語では最初に主語を置かないといけないというルールはありません

ドイツ語では相手にすぐに伝えたい情報が1番初めにきます。
※動詞は皆さんご存知の通り基本的には必ず2番目です。

Ich lerne heute Deutsch.
私は今日ドイツ語を勉強します。

この文章で「今日(heute)」という情報を会話相手に真っ先に伝えたければ、

Heute lerne ich Deutsch.
今日私はドイツ語を勉強します。

Ich gehe um 11 Uhr ins Kino.
私は11時に映画館へ行きます。

この文章で「11時に(um 11 Uhr )」という情報を会話相手に真っ先に伝えたければ、

Um 11 Uhr gehe ich ins Kino.
11時に私は映画館へ行きます。

Ich bin jetzt wieder motiviert.
またモチベーションが湧いてきたよ。

この文章で「今(jetzt)」という情報を会話相手に真っ先に伝えたければ、

Jetzt bin ich wieder motiviert.
今、またモチベーションが湧いてきたよ。

このように表すことが出来ます。

特に「時」を表す単語(○時、○曜日、○日など)は最初にくることが多いよ!
◆参考:「時」のドイツ語一覧まとめ

「人称代名詞」の位置

mirやdichなどの人称代名詞の語順についてもよく質問をいただきます。
人称代名詞は優先して前に置かれるというルールを覚えておきましょう!

Meine Eltern besuchen uns heute.
Heute besuchen uns meine Eltern.
私の両親は今日私たちを訪れます。(どちらの言い方もOK)

Meine Eltern besuchen heute uns.
Heute besuchen meine Eltern uns.
だとダメなの?

その文章も通じるけど、あまり自然な文章ではないかな。
ここでは、meine Eltern は人称代名詞じゃなくて主語にあたるんだ。人称代名詞unsが主語より先にあるのが変な感じかもしれないけれど、ドイツ語ではよくあることだよ。

それでは、こちらの文章を別の表現に言い換えをしてみましょう!

Meine Eltern kommen heute zu uns.
私の両親は今日、私たちの所(家)に来ます。

△Meine Eltern kommen zu uns heute.
こちらの文章も通じますが、自然な流れではありません。

先程の文章との違いとして、
①動詞がbesuchen(訪れる)ではなく、kommen(来る)である
②heute が uns よりも先にある
③uns の前に前置詞 zu が入っている
が挙げられます。

Meine Eltern besuchen uns heute.
Meine Eltern kommen heute zu uns.
はどちらもほとんど同じ意味ですが、後者はunsの前にzuが付いています。なぜだか分かりますか?

besuchen は、「○○を訪れる」という他動詞なので、目的語である4格の人称代名詞 uns(私たちを)を単体でそのまま置くことができます。
それに対して、kommenやgehenは「○○を来る(行く)」という言い方が出来ない自動詞なので、「○○に/へ」の意味である前置詞が必要です。ここでは、「(人)のところへ」という意味の前置詞zuが人称代名詞3格のunsとセットになって使われています。
◆参考:ドイツ語の前置詞29個一覧|格支配別に整理して覚えよう!

同じような意味でも動詞によって前置詞が必要なこともあることに、注意しましょう

あれ?人称代名詞が優先して置かれるって言ってたけど、なんでこの文章ではheuteがunsよりも先に来ているの?

ポイントは、unsが単体ではなく、zu unsでセットとして入っているところにあるよ(=前置詞句)。

人称代名詞は優先されるのはあくまでも人称代名詞が単体で入るときなので、前置詞句が使われているこの文章では適応されません。
時を表す単語が先に来る傾向が多いため、そのルールがこの文章に適応されています。

続いて先程の文章を疑問文にしたものですが、疑問文でもルールは同じです。

Wer besucht euch heute?
誰が今日君たちを訪れるの?

Wer kommt heute zu euch?
誰が今日君たちの所(家)に来るの?

1つ目の文章は人称代名詞(euch)が優先して置かれ、2つ目では時を表す表現(heute)が優先して置かれています。

疑問詞 wer(誰が)を使うときは、動詞の活用が複数形ではなく三人称単数形になることに気を付けましょう!
◆参考:ドイツ語の疑問詞まとめ:頻出フレーズもセットで覚えよう!

最後にもう一つ例文を見てみましょう。

Gefällt dir die Stadt?
この街は君に気に入ってる?(=君はこの街が好き?)

主語がdie Stadt(この街は)です。
3格の人称代名詞dir(君に)が優先して前に置かれています。

△ Gefällt die Stadt dir?
の語順だと不自然ですので気をつけましょう!

またgefallenは日常会話でよく登場しますが、日本語だと「君はこの街を気に入っている?」というように、主語が「君」になるので惑わされることが多いドイツ語特有の動詞の一つです。

応用①文中に3, 4格の人称代名詞が混在しているとき

Wie geht es ihnen?
お元気ですか?

お!よく聞く挨拶の文だ!人称代名詞は…あれ?es? ihnen? どっちも?

そう!この文章はesとihnen、どっちも人称代名詞だよ。
人称代名詞が同じ文章に複数入っている場合は、(1格→)4格→3格の順で優先して置かれるよ。
この文章ではes(1格)→ihnen(3格)の順序になっているね。

応用②文中に3, 4格の名詞が混在しているとき

文章の中に3格と4格の名詞が混在する時は、3格→4格の順で置かれます。
人称代名詞の3格と4格が混在する場合と逆なので注意してください。

Ich schenke meiner Nichte ein Buch.
私は私の姪っ子に一冊の本をプレゼントします。

ここではmeiner Nichte(女性3格)→ ein Buch(中性4格)の語順になっていますね!

そのため、
△Ich schenke ein Buch meiner Nichte.
だと不自然な文章となります。

練習問題

◎それでは、以下の文章をドイツ語にしてみましょう↓

「私の姪っ子はもうすぐ誕生日です。私は彼女に一冊の本をプレゼントします。」
姪っ子:die Nichte(ちなみに甥っ子はder Neffeです)
もうすぐ:bald

Meine Nichte hat bald Geburtstag. Ich schenke ihr ein Buch.
私の姪っ子はもうすぐ誕生日です。私は彼女に一冊の本をプレゼントします。

bald は時を表す表現なので Geburtstag より前に(もしくは「誕生日がある=Geburtstag haben」という枠構造で考えても◎)、人称代名詞 ihr は優先されるので ein Buch よりも先に置くことはできましたか?

◎次に、以下の文章を確認してみましょう↓

「これは一冊の本です。私はこれを私の姪っ子にプレゼントします。」

Das ist ein Buch. Ich schenke es meiner Nichte.
これは一冊の本です。私はこれを私の姪っ子にプレゼントします。

ein Buch(中性名詞4格)を人称代名詞 es で置き換えた文章です。
もう皆さんお察しの通り、先ほどと同じく人称代名詞は優先して前に置かれるいうルールが適応され、es → meiner Nichte という語順になっています。

◎最後に少しチャレンジしてみましょう!前情報を加えた次の文章をドイツ語にしてみましょう↓

[前情報]
Meine Nichte hat bald Geburtstag. Dieses Buch habe ich gekauft.
私の姪っ子はもうすぐ誕生日です。私はこの本を買いました。

「私はこれを彼女にプレゼントします。」

Meine Nichte hat bald Geburtstag. Dieses Buch habe ich gekauft.
私の姪っ子はもうすぐ誕生日です。私はこの本を買いました。

Ich schenke es ihr.
私はこれを彼女にプレゼントします。

× Ich schenke ihr es.
この語順だと残念ながら不正解です。

文中に人称代名詞が3格・4格ともに入っている場合、4格が優先して前に置かれるんでしたよね。
この文章では es が4格、ihr が3格なので es → ihr の語順です。

同じ文章の中に3格と4格がある場合は、
名詞の場合は3格
人称代名詞の場合は4格
の順で優先されて置かれるよ。少しややこしいけど覚えておいてね!

◆こちらの配信でも詳しく解説していますので、是非聴いてみてください↓

応用編「tekamoloの法則」

B1/B2レベルで登場する文法ルールですが、初心者でも知っておくと便利なので最後に紹介します。

temporal(時間)→ kausal(理由)→ modal(様態)→ lokal(場所)の順でドイツ語の文章は構成されるというルールで、これらの頭文字を取って、tekamoloの法則と呼ばれています。

Ich gehe um 11 Uhr ins Kino.
私は11時に映画館へ行きます。

例えばこの文章では、um 11 Uhr(時間)→ ins Kino(場所)の語順になっています。

枠構造で考えるのが難しいと感じる人は、tekamoloの法則で考えてみてね!(もちろん例外もあるよ)

Das Bärchen läuft heute wegen seiner Verletzung langsam in den Wald.
熊さんは今日怪我をしているので、ゆっくりと森へ歩いていく。

少し長い文章ですがここでは、
heute(今日): 時間
→ wegen seiner Verletzung(怪我をしているので): 理由
→ lamgsam(ゆっくりと): 様態
→ in den Wald(森へ): 場所
という順序で構成されています。

◆tekamoloの法則についてもっと詳しく勉強したい方はこちら↓

語順ルールまとめ

今回はドイツ語の語順について、以下の解説をしました↓

枠構造2番目の動詞と繋がりの深い単語は最後に置かれる。
主語の位置主語は最初とは限らない。相手にすぐに伝えたい情報が最初に来る。
※特に「時」を表す単語は最初にくることが多い。
人称代名詞の位置人称代名詞は優先して前に置かれる。
文中で複数の人称代名詞がある場合は、4格→3格の語順。
※文中で複数の名詞がある場合は、3格→4格の語順。
tekamoloの法則temporal(時間)→kausal(理由)→modal(様態)→lokal(場所)の順序で文章は構成される。

もちろん例外もありますが、まずはこの4つのルールをしっかり押さえることが大切です。

自然な語順感覚を身につけるおすすめ勉強法

中々文章を読むだけでは、インプットは出来てもアウトプットまでいかないですよね。
実際に会話の場面になると、文法ルールなどを色々考えている時間はありませんので、たくさんインプット、アウトプットを行うことで口を慣れさせること、身体で覚えていくことが大事になります。

おすすめの勉強法は、自分のレベルに合ったYouTube動画などで、ドイツ人がどのような単語を最初に置いているのかを意識して聞き、インプットをたくさん行うことです。

◆以下の記事ではおすすめのチャンネルを紹介していますので是非ご覧ください↓


そして、Vollmondのポッドキャスト「ココロ踊るドイツ語講座」では、記事で紹介したドイツ語の語順が分からない人向けの配信を公開しています。
ぜひ、何度も聞いてドイツ語に慣れていってくださいね♩

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執筆:komachi(Vollmondドイツ語講師)
執筆協力:momoka

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