間違える人が多いドイツ語文法・表現4選

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今回はドイツ語レッスンでよく訂正する間違いについて紹介していくよ!
もし間違えて覚えていたところがあったら、このタイミングで直しておこう。

この記事ではドイツ語学習者がつまずきやすい表現について例文を交えながら丁寧に解説します。

この記事で扱う「間違い」の例です。

  • Ich bin Spaß.
  • Ich habe Spaß gemacht.
  • Ich kann das Buch.
  • Ich kenne Deutsch sprechen.
  • Ich mochte ins Kino gehen.
  • Ich mag Tee trinken.
  • Ich gern trinke Tee.

何が間違ってるか分からない、どうすれば正しくなるのか分からない方は、この機会に一緒に復習していきましょう!

間違いをするのは決してダメなことではありません。ただ、せっかく学習している言語なのだから「できるだけ正しく話したい」と思う人は、ぜひ参考にしてください。

Spaß「楽しい」の使い方

ドイツ語学習者がよく間違ってしまうことの一つに、Spaß という単語の使い方があります。

例えば、「私は楽しい」と言いたい時に、Ich bin Spaß というのは間違いです。一体何が間違っているのでしょうか。

Spaß ≠ 形容詞!

形容詞とは楽しい、嬉しい、のように「〜しい」で終わるような言葉のことです。

一方 Spaß は大文字で始まっていることからも分かる通り「楽しみ、冗談」といった意味を持つ名詞です。

Ich bin Spaß というと、「私は”楽しみ”である」という意味の通らない文になってしまうんだ…
言っちゃったことあるかも!
正確には spaßig という形容詞もあるんだけど、あまりこのような文脈では用いられないかな。

Spaß machen と Spaß haben

また日本語とドイツ語では、それぞれの言葉の持つ役割が異なってくるので、残念ながら同じように文を作れるわけではありません。

「楽しい」と言いたいときドイツ語には、Spaß machen と Spaß haben の2種類の言い方があります。

Spaß machen

直訳すると「楽しませる」という意味です。「〜が私を楽しませる」という表現にすることで、日本語でいうところの「私は楽しい」を表すことができます。

現在形・過去形の2パターンを下に紹介しています。

Das / Es macht mir(viel)Spaß.
それは私を(とても)楽しませる。(=私は楽しい

Die Party hat mir(viel)Spaß gemacht.
そのパーティーは私を(とても)楽しませた。(=パーティーは楽しかった

今回「とても」を viel で修飾しているのも、Spaß が名詞であることに由来しています。ここを sehr と表現してしまう人も多いですが、正しくはこの場合、使うことはできません。

※ sehr viel Spaß なら大丈夫です。

頭では分かっていても、喋っているとつい “Ich mache Spaß” “Ich habe Spaß gemacht” などと主語を ich にしてしまう人も多いです。

繰り返し口に出す、気づく度に言い直すことで、ちょっとずつクセづけしていくと、自分の表現になるはずですよ!

Spaß haben

さて、こちらは直訳では「楽しみを持っている」となり、より日本語の感覚に近い表現かもしれません。

Ich habe Spaß am Skifahren.
私はスキーをしているとき楽しい

Ich hatte Spaß mit Leuten aus verschiedenen Ländern.
私は様々な国から来た人々と楽しんだ

この表現は Spaß machen に対してわかりやすいので、使う学習者も多いです。しかし通常は Spaß machen の方が聞く機会が多いです

Spaß haben は例えば、Hattest du gestern Spaß?(昨日は楽しかった?)のように、質問の際などにより使われる表現になります。

ドイツ語の感覚になれるためにも、まずは Spaß machen をマスターすることを強くオススメするよ!
まとめ:「楽しい」をドイツ語で
  • まずは Spaß machen に慣れよう
  • 主語が何なのか(=何が楽しませてくれるのか)注意しよう
  • 難しい人は Das macht mir Spaß.(楽しい)Das hat mir Spaß gemacht.(楽しかった)を丸暗記しておこう

können と kennen

können と kennen というこの二つの動詞は、母音が一文字違うだけと、音と見た目が似ていることから、混同してしまう人が多いです。

私はこの本を知っている、としたいのに Ich kann das Buch. となってしまったり、ドイツ語を話せますと言いたいのに Ich kenne Deutsch sprechen. となってしまったり・・・。

使われ方も、意味もまったく違う二つの言葉なので、この機会に整理しておきましょう。

意味の違いと活用形

まず、können は英語でいうところの「can」にあたる助動詞。その他の動詞と組み合わせて、「〜できる」という意味を表します

一方、kennen「(〜を経験的に)知っている」という意味の動詞です。

Ich kann fließend Deutsch sprechen.
私はドイツ語をすらすら喋ることができる

Ich kenne einen freundlichen Deutschen.
私はある親切なドイツ人(男性)を知っている

活用してみると、形も音も違いは歴然になりますね。何度も声に出して、音と一緒に覚えてしまいましょう!

können の活用(現在形)
ich kann wir können
du kannst ihr könnt
er kann Sie können

 

kennen の活用(現在形)
ich kenne wir kennen
du kennst ihr kennt
er kennt Sie kennen

kennen と wissen の違い

「知る」という意味の動詞には kennen の他に wissen がありますが、こちらは「(抽象的知識・情報として)知っている、分かっている」という意味になります。

Ich kenne ihn, aber ich weiß seinen Namen nicht. (私は彼とは面識があるけれど、名前は知らない。)

まとめ:können と kennen
  • können: 〜できる
  • kennen: 〜を知っている
  • 何度も声に出して音と一緒に覚えよう

 möchten の過去形「〜したかった」

3つ目に紹介する間違いは「Ich mochte ins Kino gehen.(私は映画館に行きたかった)」です。

「〜したい(現在)」と表現する場合には möchten を使うことができます。しかし「〜したかった(過去)」と表現したい時には、möchten を使うことはできません。また、mochte は mögen の過去形であり möchten の過去形ではありません。

一体なぜなのか、そして、その場合どのように表現したら良いのでしょうか?

möchten は接続法II式

そもそも möchten は文法上、助動詞ではなく、助動詞 mögen の接続法第II式になります。

接続法第II式とは、簡単にいうと「仮定的な話」を表す時に使う表現です。だからこそ「〜したい(=できたらいいなあ)」という気持ちを表せるのです。

(参考)【接続法Ⅱ式】ドイツ語の重要文法をマスターしよう!

しかし、if 的な「仮定」には、時間という概念が抜け落ちています

そのため、「〜したかった」というように時制を絡めた表現をすることができないのです。

じゃあ、一体どんな表現を使えばいいんだろう?

wollen の過去形 wollte

ドイツ語で「〜したかった」と言うときは、助動詞 wollen の過去形 wollte を使います。

実は現在形の場合、wollen と möchten ではニュアンスが違います。

wollen は強い意志を表すのに対して、婉曲的なニュアンスをはらむ möchten は控えめな表現になります。しかし、過去形にした時には、こうした wollen の力強いニュアンスはかなり薄まります。

(参考)ドイツ語助動詞”wollen”の全て|möchten/英語willとの違い

Nun möchte ich eine Tasse Kaffee im Café dort trinken und eine kleine Pause machen.
今すぐあそこのカフェで一杯コーヒー飲んで、一休みしたいなぁ

Gestern wollte ich eigentlich ins Café gehen, um eine kleine Pause zu machen.
昨日ほんとは、ちょっと休憩するためにカフェに行きたかったんだよなぁ。

wollte を用いるべきところで、mochte を用いてしまう人がいます。ですが、mochten は助動詞 mögen の過去形で「〜が好きだった」という意味になり、「〜したかった」という意味にはなりません。
まとめ:「〜したかった」
  • möchten を使うのは現在形のみ
  • wollen の過去形 wollte を使おう!

mögen と gern

最後に扱うよくある間違いは Ich mag Tee trinken.(お茶を飲むのが好きです)です。

mögen(〜が好き)に、別の動詞をつなげて「私は〜するのが好き」と表現しようとしてしまうパターンです。

「好き」と伝えたいときドイツ語には、mögen と gern という2種類の表現方法があります。

+名詞:mögen

mögen には2つの意味があります。

  1. 〜かもしれない「可能性」
  2. 〜が好き「好み」

(参考)ドイツ語7つの助動詞のキホンを押さえよう!意味と使い方まとめ

後者の意味になるのは、基本的には mögen の後に名詞が続く場合のみです。

Ich mag französischen Wein.
私はフランスのワインが好きです

Magst du Obst?
君は果物好き

つまり「私はフランスのワインを飲むのが好きです」としたい場合、Ich mag französischen Wein trinken. にすることはできません。

◯◯が好き」とは言えても「◯◯をするのが好き」は基本言えないんだね!

+動詞:gern / gerne

このような場合に使えるのが、「喜んで、すすんで、好んで」などの意味を表す gern という副詞です。

「動詞+gern」という形で「〜するのが好き(=〜するのを好む)」を表すことができます。

ちなみに、gerne と最後に e が挿入された形もありますが、意味に影響はありません。どちらでも大丈夫です。

Ich trinke gern französischen Wein.
私はフランスのワインを飲むのが好きです

Ich gehe gerne ins Kino vor dem Bahnhof.
私は駅前の映画館に行くのが好きです

gern の位置にも注意しましょう。例えば gern を二番目に置いた、Ich gern trinke französischen Wein は間違いです。ドイツ語の鉄則である「動詞二番目のルール」を崩してしまうことになります!gern は動詞ではありません。

ただし実は mögen を使っても、zu 不定詞句を用いれば下のように同様の意味を表すこともできます。

Ich mag es, ins Kino vor dem Bahnhof zu gehen.
私は駅前の映画館に行くことが好きです。

(参考)便利だけど少し難しい「zu不定詞」の使い方まとめ

でも gern を使った表現の方がシンプルだし、よく使うよ。まずはこちらの表現に慣れるまで練習しよう。
まとめ:「〜が好き」
  • +名詞なら mögen
  • +動詞なら gern / gerne

まとめ

今回はドイツ語学習者がつまづきがちな「間違い」について解説しました。

最後にもう一度、ポイントをおさらいしましょう。

覚えよう!
  1. 「楽しい」というときは、Spaß machen (haben) で表す。
  2. können は「〜できる」という助動詞、kennen は「〜を知っている」という動詞。
  3. 「〜したかった」を表す時には wollen の過去形 wollte を使おう。
  4. 「〜するのが好き」と表したい時には「動詞+gern」を用いよう。

母語の日本語でさえ完璧に話せる!と自信を持って言える人はあまり多くないように、間違いをするのは日常生活において至極まっとうなことです。

Vollmond でドイツ語を教えていても、間違いを気にしすぎてなかなか話せない方も多いです。

ドイツ語を話すときはあくまでも「伝える」を意識して、ドイツ語を書くときなどにミスを減らせるよう気をつけることができるといいですね!

Vollmond では老若男女さまざまな方がドイツ語を勉強しています。「ドイツ語を勉強したい」意志を持つ全ての人が対象です♩ぜひ一緒にドイツ語を楽しみましょう!

 

執筆:komachi(Vollmondドイツ語講師)
執筆協力:Aozumi
内容・表現チェック:nico(Vollmondドイツ語講師)

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